毎度毎度、kazuでございます。
仕事で「HEMS」の補助金に関わることをしているのですが、申し込んでくるお客様や施工店、果てには同じ部署の同僚ですら「HEMS」のことをあまりよく理解してないんじゃないかと思うことがあります。
「HEMS」はいわゆる「新しいシステム」であり、少々複雑なところもあるのも事実です。
今回は「HEMS」っていったいどういうものなのか?いくらで導入できるの?メリットやデメリットは?というあたりをまとめてみようと思います。
HEMSとは
「Home Energy Management System(ホームエネルギーマネジメントシステム)」の略であり、「ヘムス︎」と読みます。
「ヘムス⤴︎」ではなく「ヘムス⤵︎」です。「ポテト」と同じニュアンスで呼んで下さい。
これはざっくり言うと、「家庭内のエネルギー(電気、ガス、水道)を管理するシステム」と言うことです。
読んだままですね。しかしその通りなのでしょうがない。
このシステムの理解度がイマイチなことの原因に、「定義の曖昧さ」があると思います。
HEMSってモノ?
ここが最初の勘違いポイントですね。
「HEMS」とはあくまで「システム」の名前であり、何かの機器を指している名前ではありません。
しかし「HEMS」というシステムを導入するために揃える必要のある機器がいくつかあります。よってその「機器」のことを「HEMS」と勘違いする人が多発しています。
分かり易く例えると・・・
「インターネット」という「システム」がありますね。スマホやPCでブラウザを閲覧したりメールを送る事で、世界中を繋ぐシステムです。
このインターネットを家庭に導入するためには「モデム」や「ルーター」などの機器を設置する必要があります。
これはすでに世の中に馴染んでいるものなので、「モデム」や「ルーター」を指して「インターネット」と言う人はおそらくいないでしょう。
「HEMS」も同様で、導入のためにいくつかの機器を導入しますが、それらの機器を指して「HEMS」というのではなく、それらの機器が構築するシステムを指して「HEMS」というわけです。
何ができるの?
「HEMS」で調べてみるとよく見る文言があります。
「エネルギーの『見える化』と一元管理を実現」という一文ですね。
このままではよくわからないので、ちょっとずつ紐解いていきます。
まずは「見える化」について。実はこれが「HEMS」の最低条件、つまり「定義」になってきます。
「エネルギー」というと漠然としているので、ここでは「電気」にクローズアップしてみましょう。
家庭内にはたくさんの「電化製品(=電気を使うもの)」がありますよね?冷蔵庫や電子レンジの大物から、あなたのスマホを充電しているコードもコンセントに繋がっているはずですので、「電化製品」に含まれます。
その1つ1つが今現在、どれくらいの電気を消費しているのか気になりませんか?
それを「モニター」に表示させ、リアルタイムで計測できるシステム。それが「HEMS」であり「見える化」です。
この「モニター」はメーカーによって違いますが、多くの場合で「タブレット」や「スマホ」を使います。システム導入の際に「専用のタブレット」を購入する場合もあれば、既にお使いのスマホやタブレットにアプリ等を入れて使う場合もあります。
※出典:Panasonic
こちらがモニター画面ですね。部屋ごとの消費電力をリアルタイムで表示します。
更にここから1歩進んで、このモニターで「電源のオンオフ」を行う。それが「一元管理」となります。
モニターで各部屋、各機器の現在の使用電力を確認し、必要のないものがあればそのまま電源オフ。
そうする事で省エネを目指すのが「HEMS」の目的です。
導入の流れ
※出典:Panasonic
「HEMS」の導入には多くの場合、工事が必要になります。
「HEMS」とは、各家電の消費電力を計測するシステムなのに対し、その「各家電」には消費電力を申告する機能がありません。
その為、まずは「分電盤」の工事から必要になります。これも各メーカーごとに違いはあれど、今後標準化していきそうな「スマート分電盤」について説明します。
「分電盤」とは、電線から引っ張って来た電気を各コンセントに分配するための機器です。各家庭で最低でも1つはあり、玄関や脱衣所に設置されている事が多いのではないでしょうか。
この「分電盤」で各コンセントに送る電力を計測しようということで出来たのが「スマート分電盤」です。上の画像の「HEMS」の文字のすぐ下の機器ですね。
次に計測した電気を「受信機(兼発信機)」に送ります。これはモデムのようなタイプが多く、上の図の中心の機器がそれに当たります。
更にこの「受信機」が「発信機」の役割も果たし、タブレットやスマホに情報を送りモニターにするわけです。
これが大まかな「HEMS」の仕組みになります。いやぁ、実にスマートですね。
ここで1つ覚えておきたい事があります。それが「ECHONET Lite規格(エコーネットライト)」です。
これは簡単に言えば「電波」の規格のようなもので、Wi-Fiのようなものを想像すれば分かり易いかと思います。
上記で説明したHEMSの仕組みは、全て分電盤を介してのシステムになりますが、この「ECHONET Lite規格」を装備した家電であれば分電盤を通さずに家電そのものが消費電力の情報などを送信または受信できます。
近年は大型家電を中心にこの「ECHONET Lite規格」を装備したものが次々と発売されています。
導入費用は?
前述したように、「HEMS」を導入するためには幾つかの機器を購入・設置(工事)する必要があります。
「HEMS導入機器」は様々なメーカーより多様に販売されており、価格も形態も一様ではありませんが、私が仕事で見ている限りではおよそ「10万円から20万円程度」が相場に感じます。
幅がそこそこあるのは、同じ「HEMS」であっても「見える化」だけができるものや「一元管理」までできるもの、更に「見える化」についても「家全体」なのか「家の一部」なのかで値段が変わってきます。
そう、これが「定義の曖昧さ」であって、「見える化だけ見ても幅がある」のが現状です。
そのため単純に「HEMSを導入した」というだけではどこまでの事ができるようになったのかを表せないもどかしさがあります。
補助金が貰える?
HEMSは国が推進・推奨しているシステムです。(後述)
補助金が出て然りなのですが、かつて「SII」という国の機関(エヴァみたい)が補助金事業を行っていたものの、2018年現在では行なっていません。なんでやねんっ!
それじゃあ補助金は貰えないの?となりますが、県や市町村などで補助金を支給しているところが多くあります。
導入を検討の際にはお住いの県や市に確認してみた方がいいでしょう。
1つ注意点として、こういった補助金事業の多くは「施工前」の申請が必要です。
工事後に補助金制度を知り、利用しようとしても後の祭りですのでお気を付けを・・・
導入するメリットは?
「HEMS」導入のメリットは、「見える化によって節約意識が向上し、省エネに繋がること」です。
これは「HEMS」の本来の役割であり、誕生した理由そのものです。
しかしその一方、一元管理により「手持ちのスマホで外部から自宅の家電を操作できること」の利便性もあります。
これは時に省エネの真逆をいく事もあります。
例えば、とても暑い夏の日。仕事が終わって「帰路の電車の中からリビングのエアコンをオンにする」という事も可能になります。
これは一元管理を伴うHEMSを導入していなければできない事で、導入したことにより結果的に電力消費は上がることになります。
それでも帰ってすぐに涼しい部屋って素敵じゃないですか。間違いなくメリットと言っていいでしょう。
デメリットもある
もちろんデメリットもあります。
まずは「導入費用が高い」こと。前述したように、幅はありますが工事費も含めて10万円以上の出費は覚悟しなければいけません。
今のところ既存の住宅にリフォームでHEMSを導入する方は少数のように感じます。大多数が新築時の導入ですね。
これは「ZEH(ゼッチ)」と呼ばれる「ゼロエネルギーハウス」、つまり「太陽光発電やオール電化でエネルギーを自給自足できる家」が最近の流行り、主流であり、その一環として導入される事が多いからです。
2000万円や3000万円の家を建てようという時に、せいぜい20万円のHEMSは大事の中の小事なのでしょう。確かに新築時なら金銭感覚の麻痺も相まってそこまで気にならないのかもしれません。
しかし、リフォームでの10万円や20万円は少々考えてしまいますよね。
しかもこのシステム、「導入するだけでは全く節約にはならない」のです。
太陽光発電システムは導入すればほっといても電気を作ってくれますが、HEMSについては導入しても節約をするのは結局人の手ということになります。
もう1点。これは実際に使っている人たちの声ですが、「導入しても見る(使う)のは最初だけ」
最初のうちは面白がってモニターを頻繁に見るのだそうですが、なんせ新しいシステムで馴染みがないため、そのうち全く見なくなる方もいるそうです。
確かに「現在の電気使用料」を見ていても別に面白くはないですもんね。まだまだ課題は多いと感じます。
まとめ 〜HEMSの今後〜
国の目標として「2030年までに全世帯にHEMS導入」掲げられているそうです。ホンマかいな・・・
国がやるという以上やるのでしょうが、正直今のままのシステムでは厳しいんじゃないでしょうか。
まず、デメリットにも書いたように導入費用の問題が大きい。更に工事を伴うという点でもハードルが高く感じます。
このシステムがもっと標準化していけば、前述の「ECHONET Lite規格」も家電に標準装備され、分電盤を交換する必要がなくなるかもしれません。
更に、モニター本体がその「ECHONET Lite規格」を受信する事ができれば、受信機の必要も無くなります。
もっと言えば、スマホやタブレット、またはPC自体がこの電波を受信できれば受信機すら必要無くなりますが、流石にそこまでは難しいでしょう。
最終的に「受信機もしくはモニター」だけ購入し、Wi-Fiのように共通のパスを家電と受信機に設定すればそれだけで導入できるようになるのなら一気に普及するのではないかと思います。
「導入しよう」と思い大金を払って導入するうちはまだまだ。「家電を買い換えたらいつの間にか出来るようになってた」くらいのシステムでないと全世帯普及は無理なのではないでしょうか。賃貸住宅もあるしね。
私の願望的なものになってきますが、「見える化」や「人の手を使う一元管理」だけでなく、「自動で最適化」まで出来るようになれば導入する価値もグッと上がると思います。
また、最近何かと話題の「スマートスピーカー」
これも今後「HEMS」に絡んでくるのではないかと私は睨んでいます。
家電大好き新しい物大好きな私は現在、どのスマートスピーカーを購入するか検討してるところですので、購入したらまたコラムを書かせてもらおうと思っています。
まとめとして、「HEMS」にはまだまだ課題は多いのではないでしょうか。
導入については「新築するからついでに」という感じであれば悪くはないと思いますが、既存の住宅にわざわざ導入するのであれば「今ではないかなぁ」と感じます。あくまで私個人の感想ではありますが。
導入を検討なさっている方も、「HEMSの未来」までじっくりと考慮した上で考えてみるといいかもしれません。
長くなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
それでは、また。
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